FIREとは何か? Fat FIRE・Lean FIRE・Side FIREなど5つのタイプとFIROを比較し、必要資産と4%ルールまで詳しく解説していきます。
目次
FIREとは? 〜経済的自由と早期退職のライフスタイル〜
FIREとは、Financial Independence, Retire Early(経済的自立と早期退職)の略称です。 これは、生活費を資産収入(株式の配当、投資信託の分配金、不動産収入など、自分が働かずとも得られる不労収入)でまかない、早期に退職して自由な時間を手に入れるという考え方です。
かつては「定年まで働くのが当たり前」でしたが、FIREムーブメントの広がりによって、より早い段階で「働くことからの自由」を得る人が増えています。
FIREとひとことで言っても、実はさまざまなスタイルが存在します。そのスタイルの違いは、大きく以下の3軸で整理できます:
- 不労所得の多寡(資産収入で生活費をどの程度まかなっているか)
- 労働所得の有無(副業・パートなどで収入を補っているか)
- 生活費の大小(支出水準が高いか低いか)
これらを組み合わせることで、自分に合ったFIREのあり方が見えてきます。
以下では代表的な5つのFIREのタイプをご紹介します。
Fat FIRE(ファットFIRE)
みなさんが「FIRE」と聞いてまず思い浮かべるのが、このFat FIREかもしれません。 これは、経済的自立を達成したうえで、ゆとりのある贅沢な生活を維持しながら完全リタイアするスタイルです。
高年収の人が支出を抑えつつ、資産を多く蓄積して目指すことが多く、 日本水準では年間300〜600万円程度の生活費で成立する場合もあります。
Side FIRE(サイドFIRE)
Side FIREは、基本的な生活費は資産収入でまかないつつ、副業や小さなビジネスなどで収入を補うスタイルです。
完全リタイアはしていないものの、生活費の一部を“楽しめる仕事”や“自分らしい働き方”でまかなうことで、精神的にも経済的にもバランスの良い自由を得ることができます。 Barista FIREに比べて、収入の必要性はやや低めですが、働くことの意義や収入源の分散を重視する人に向いています。
Barista FIRE(バリスタFIRE)
Barista FIREは、生活費の大部分を資産から得つつ、足りない分だけパートタイムで働くというスタイルです。
アメリカでは、カフェ(スターバックスなど)でのバイトで医療保険を確保しながらFIRE生活を送る人が多かったため、この名前が付きました。 日本では「社会とのつながり」や「緩やかな労働」を目的に、軽く働く選択として注目されています。 Side FIREよりも、労働収入への依存度はやや高めで、「生活のために働く」側面も残ります。
Coast FIRE(コーストFIRE)
Coast FIREとは、すでに老後の資産形成が完了していて、今後はそれが自然に成長していくのを待つだけというスタイルです。
そのため、現在の生活費だけを稼げばOKで、貯金や投資はしなくても問題ありません。若いうちに投資に集中して、あとは自分のペースで生きるという生き方です。 Barista FIREやSide FIREと似ていますが、「老後の不安がほぼない」のが大きな違いです。
Lean FIRE(リーンFIRE)
Lean FIREは、必要最低限の支出でシンプルな生活を送りながら、FIREを実現するスタイルです。
日本水準では年間150〜250万円程度の少ない生活費で成立させるため、ミニマリズムや地方移住、徹底した節約などが重要になります。
「Fat FIREほどの資産はないけれど、自由が欲しい」という人にとって、現実的な選択肢でもあります。
◯◯FIREのまとめ
以下は、5つのFIREスタイルを「不労所得の多寡」「労働所得の有無」「生活費の大小」の3軸で整理した表です。
FIREスタイル | 不労所得 | 労働所得 | 生活費 | 備考 |
---|---|---|---|---|
Fat FIRE | 大 | 無 | 大 | フルリタイア+ゆとりある生活 |
Lean FIRE | 小〜中 | 無 | 小 | ミニマム生活に特化 |
Barista FIRE | 中 | 小 | 中 | パートタイム等で補填 |
Side FIRE | 中 | 中 | 中 | 副業で生活費を一部まかなう |
Coast FIRE | 小(将来大) | 小〜中 | 小〜中 | 老後資産は確保済、現在の収入は生活費のみでOK |
このように整理することで、自分が「どこに重きを置き、どこを最適化するか」の方針がクリアになり、自分に合ったFIREスタイルを選びやすくなるかと思います。
FIREって「Retire Early」だけ?〜新しいFIREのカタチ〜
FIREという言葉は「Financial Independence, Retire Early(経済的自立と早期退職)」の略語として広まっていますが、近年では「Retire(退職)」に強くこだわらない、より柔軟な考え方も登場しています。
たとえば、FIREの「RE(Retire Early)」を再定義して、「Recreational Employment(趣味的就労)」と捉える考え方もあります。これはFIRE達成後も、あくまで楽しみや人とのつながりを目的として軽く働くスタイルで、「Side FIRE」や「Barista FIRE」と非常に近い考え方です。生活費のために働くというよりも、働くこと自体が充実感を生むという位置づけです。
また、「FIRO(Financial Independence, Retire Optional)」という考え方もあります。これは経済的に自立したうえで、働くかリタイアするかを自分の意志で選べるという生き方です。完全リタイアに縛られず、自分にとってちょうどよい働き方を柔軟に選択できる点で、「Side FIRE」や「Coast FIRE」の延長線上にあるとも言えます。
このように、FIREの目的は単なる早期退職ではなく、「お金の不安から解放され、自分の時間や選択肢を取り戻すこと」にシフトしつつあります。それぞれのスタイルの違いはあれど、最終的には「自分にとって心地よい自由をどう実現するか」がFIREの本質と言えるでしょう。
FIREで必要な不労収入と資産額は?
FIRE(経済的自立と早期退職)では、生活費を働かずに得られる不労収入でまかなうことが基本です。ここでは、年間150万円の不労収入を得るために必要な資産額について説明します。
まず一つ目は、4%ルールを活用した取り崩し型のアプローチです。
「4%ルール」とは、退職後、運用資産の4%を毎年取り崩しても、資産が30年間枯渇しない可能性が高いという、米国の「トリニティスタディ」に基づいた取り崩し戦略です。
たとえば年間150万円の生活費をまかなおうとした場合、150万円を4%で割る(150万÷0.04)と、必要な資産額はおよそ3,750万円になります。つまり、3,750万円の運用資産があれば、毎年その4%である150万円を取り崩して生活できるという計算です。
とはいえ、4%ルールはアメリカの物価や市場を前提にした理論であり、日本にそのまま当てはめるには注意が必要です。近年ではより保守的に「3.5%ルール」や「3%が安全」とする考えもあり、資産を長く持たせたい場合は安全率を下げて見積もるとよいでしょう。
二つ目は、資産の元本には手をつけず、配当や分配金のみで生活費をまかなう方法です。
運用方法や想定利回りによって必要資産額は異なってきます。たとえば高配当株やETFで年3%の配当を得られるなら、必要資産は約5,000万円になります。投資信託の分配金で年2.5%の利回りなら、6,000万円程度が必要です。一方で、J-REITなど高配当の資産で5%の利回りを見込む場合、3,000万円でも可能です。ただし、利回りが高いほどリスクも高まる点には注意が必要です。
それぞれの手法における必要資産額を、利回り別に一覧にまとめました。
不労収入のタイプ | 想定利回り | 必要資産額 | 備考 |
---|---|---|---|
株式の配当(利回り3%) | 3% | 約5,000万円 | 高配当株・ETFで現実的に可能な水準 |
投資信託の分配金(利回り2.5%) | 2.5% | 約6,000万円 | 国内ETFやバランス型などに多い利回り |
米国インデックスETF+取り崩し(年利回り4〜7%想定) | 4% | 約3,750万円 | 配当込みで4%取り崩しが目安 |
J-REITなどの高配当資産(利回り5%) | 5% | 約3,000万円 | 変動リスクあり・集中投資は注意 |
そもそも、公的年金や副業収入がある場合には、不労収入の必要額が減るため、必要な資産額も抑えられます。ご自身のライフスタイルや支出に応じて、必要な不労収入額と資産形成のゴールを設定することが重要です。
まとめ:自分に合ったFIREを見つけよう
FIREにはさまざまな形があり、「完全リタイア」だけが正解ではありません。 ライフスタイルや価値観に合わせて、自分にぴったりのFIREを見つけることが大切です。
たとえば、Fat FIREほどの資産はなくても、Lean FIREとして質素に自由を楽しむこともできますし、Side FIREやBarista FIREのように「少し働く」選択を通じてFIRE状態を維持することも可能です。
なお、著者は現在会社員として働きつつSide FIREの準備をしています。2025年11月からSide FIRE予定です。副業としてアフィリエイトサイトを運営しており、それが退職後の「Side」となります。生活の一部は資産収入でカバーしつつ、自分のスキルや好きなことで働く、そんな“自由だけどつながっている”生き方が自分にはちょうどいいと感じています。
あなたにとって理想のFIREはどのタイプでしょうか? 今の自分に問いかけながら、未来のライフデザインを考えてみてください。
参考文献・リソース
FIRE全体に関する参考文献
- Wikipedia: FIREムーブメント(日本語)
- FIREの基本概念について日本語で解説されています。ただし、各スタイル(Fat FIREやLean FIREなど)の分類や詳細な説明は含まれていません(2025年5月時点)。
FIREスタイル(◯◯FIRE)に関する参考文献
- Wikipedia: FIRE movement(英語)
- FIREの基本概念だけでなく、Fat FIRE、Lean FIRE、Barista FIRE、Coast FIREなどの各スタイルについても分類・説明されています。
FIRE(Financial Independence, Recreational Employment)に関する参考文献
- Reddit: FIRE(Financial Independence, Recreational Employment)についての議論
- FIRE達成後に趣味的に働く「Recreational Employment」について、実際の体験談や意見が交わされています。
FIRO(Financial Independence, Retire Optional)に関する参考文献
- Doximity: Why I Try to Live FIRO, Not FIRE
- 医師が自身の経験をもとに、完全リタイアではなく柔軟に働く選択肢としてのFIROの生き方を紹介しています。
4%ルールに関する参考文献
- 大和ネクスト銀行:セミリタイア(F.I.R.E)するなら知っておきたい資産運用の「4%ルール」とは?
- 4%ルールの基本的な考え方や、日本での活用上の注意点についてわかりやすく解説されています。
- リベラルアーツ大学:「全世界株で4%取崩し」は成立するのか?
- 全世界株式への分散投資を前提とした4%ルールの現実性や運用戦略について検討した記事です。